天地無用

なんでもアリ・様々なテーマで綴るコラム亜空間。

不完全なシリコンオーディオ〜ソニーMSウォークマン

筆者は写真を見ての通り、ソニーのメモリースティックウォークマン(以下MSW・でもこう書くとどうしても某ソフト会社を思い浮かべてしまう)を入手した。ことわっておくが自分のポリシーでは買わないシロモノである。とある理由でいただいたとだけ言っておこう。紹介記事はこれまでいくつか目を通したが、某「携帯電話をたくさん所有する批評家」がいつもの調子でわけのわかんないレビューでやんわり誉めていたのを除き、その他はほとんど誉めている内容は無い。欠点だらけなのである。

・高い(定価44000円)。
・電池寿命は4時間、しかも乾電池が使えない。
・PCにストレージデバイスとして認識させ、データのやり取りができない。
・MP3にしても、WAVEにしても専用ソフトでエンコードして、専用ソフトで本体に送る必要がある
・メモリースティックしかだめ。しかもマジックゲート対応のもの。(本体の半分くらいがこいつの値段)

これだけ欠点が並んだら、よっぽどのソニー信者かコレクターしか買わないだろう。僕はそのどちらでもない。しかしながらとある事情で、このウォークマンのオーナーになってしまった…。

欠点はわかっていたが、ちょうどネタの素材にはなるし、若干ながらメリットもある。愛用しているCDウォークマンよりかなり小さくて、厚みはあるが携帯電話よりも背もコンパクトだから持ち運びはしやすいだろうし、音トビもなくなる。好きな曲を編集してCDに焼いて、なんて面倒なこともしなくていいに違いない。明るい気持ちでオーナーとしての喜びを自ら演出し始める筆者であった。


パッケージは、本体、メモリースティック(64MB、マジックゲート対応)、ヘッドフォーンと延長コード(胸ポケットに入れて使うことを前提にされているようでヘッドフォーンケーブルが標準だと短い)、USBケーブル、電源アダプタ、USBケーブルや電源アダプターを接続するための本体アダプタ、専用ケース、マニュアル、それにPC用の各種ソフトの収められたCD−ROMで構成されている。

●前置きはこれくらいにして…

手に入れば早速聴いてみたくなるものであるが、残念ながら電池は放電してしまっており、充電をしなくてはならない。またメモリースティックにはデモソングでも入っているかと期待したが、これも×。今は昔の初代ウォークマンにはちゃんとデモテープがついてきたが、最近ソニーも細かいところに気が回らない。仕方ないので充電しつつ、PCに専用ソフトをインストールすることからはじめた。インストールが必要なのは専用のデータ管理ソフトやMSWをUSBで認識させるドライバーなどだ。MSWのポイントとして、
・PCがあって初めて機能する。単独では単なるハイテクガラクタ
・音楽データは基本的に同一PCで管理しなくてはならない。
が挙げられる。PC無しでは用がたたないのに、本体パッケージにはアップグレードしたWindows98等での動作は保証しないなどとケチくさいことが書いてある。また2番目のポイントは著作権保護重視の管理思想のシロモノで、PC内の決められたディレクトリーで集中管理することが必要なため、リムーバブルメディアへの書き出しして、そこから読み込みことはできない。(同じディレクトリーに書き戻せばおそらく読めるのだと思うが)PCのデータ管理方法や、ディレクトリーの切り方は個人のノウハウの差が顕著に出る部分で、筆者は少なくともこだわりをもっている。またデータは様々なデバイスにまたがって保存されることが多い(そもそもバックアップを取らないとこわいもの。)特定のドライブレターやディレクトリーを強要したりするソフトは、筆者は敬遠しているが、データの分際で置き場所を動かせないというのは、多いに不満である。

さて文句が多くなったが、充電までにまだ時間があるので、収録音源を準備することにした。専用ソフト「OpenMG Jukebox」でCDリッパー〜ATRAC3という独自形式への変換〜MSWへの転送が行える。CDドライブはちょっと古めの東芝製32倍速で、こいつはフリーウェアーのCdexを使って低速度安定させないとノイズや音トビが発生するドライブであるのが気になったが、思った通り曲の頭で音トビが発生している。仕方ないのでまずは持ち合わせのMP3を変換して読み込ませることにした。ATRAC3への変換は標準のビットレートで通常のMP3変換とほぼ同様の時間感覚でエンコード可能。充電が終わった本体で聴いてみると、音質はまずまず。登録したはずのアルバム名が出ないが、曲名はちゃんと漢字も含めて表示されており、一応のシリコーンオーディオ体験ができた。

さて一度本体に転送した音はカンタンに消せない。すばらしいというか過保護というか、ソニー殿のお考えになったデータ管理システムでHDDに貯めたデータは3回までメモリースティック等の機器に転送(チェックアウトという)できることになっているので、消すときは同様に専用ソフトで処理をしないと回数カウントが減ってしまう。(これをチェックインという)さてチェックインをしようとするが、「TOCが異常」だとか、デバイスとの通信エラーの旨のメッセージが表示されて戻せない! 単純に消そうとしても、ご丁寧に「チェックイン処理」を行えと蹴られる。ということは消せない!? ここはくっと我慢して、MSW本体でメモリースティック本体でメモリースティックの初期化を行った。(ここらへんで暗雲立ち込める)

ここで気を取り直す意味もこめて、さらに先ほど失敗したCDからのデータ取り込みを実現すべく、Cdexでリッピングした曲を取り込んでみよう。WAVEにしたデータもATRAC3に変換しMSWに取り込めることになっている。ところがどうしたことが、今度はWAVEの変換でコケる。何度やっても変換途中で異常終了。なんなんだこのソフトは。リブート、ソフト再インストールをしても症状は変わらずで、いいかげんキレた。これまでの知識レベルで得ていた数々の欠点以上に、こんな落とし穴があろうとは予想だにしてなかったので、よくもまあこんな段階の商品をプレステ2よりも高い値段で売るもんだと、ソニーに呆れるばかり。ロボ犬が25万円で売れちゃったあたりからおかしくなってしまったのかしら。(ちなみにこのときホームページには修正版のプログラムがアップデートされており、それも試してみたが解決はつかなかった9

●サポートの顛末
即返品といきたいところだが、一応いただいたMSWなので、最後の誠意をもってサポートセンターに電話する。これで直らなかったら即返品だ。いただきものではあるが、逆に送り主が施してくれた44000円分の誠意をソニーの欠陥商品が無にすることになるのである。

サポートは朝一だったこともありすぐつながる。好青年といった印象の方が出られ、症状を聞かれた上にPCについてあれこれ(うちは自作なのでマザーボードやパーツ、チップセット、インストールソフトまでいろいろと。対応は非常に丁寧で好感を持てる感じだったので、こちらも丁寧かつ迅速な対応で答えてしまったが、これだってりっぱな個人情報だし、モルモットの実験データを取られている感じがして後味が悪いものだった。)事情聴取の後、対応するソフトを送りますとの回答を電話でいただいた。調査して連絡などとアバウトでないのは、ソニーの気前のよさか、クレームが続いていて慣れていたのかは定かでない。

で予定より早く修正ソフトが送られてきた。「OpenMG Jukebox」のバージョンが1.0→1.1に上がっている。早速インストールすると、今度は問題なくWAVE→ATRAC3の変換もできるし、MSW本体とのデータのやりとりもうまく行く。手間がかかったが、ようやくこれで世間での評価レベルに来たわけだ。ただしあいかわらず、以下は改善されていない。
・アルバム名が液晶上に表示されない。
・CDからのリッピングで音トビが発生する。

はっきり言って従来のCDウォークマンスタイルからのメリットは、本体の小型化と軽量化くらいである。これなら背広の内ポケットにも余裕で入るし、ストラップで首からぶら下げることも可能。でも基本部分である音楽を聞くことが面倒なわけだから、次第につかわないなることは明確だ。現状の主要ソースであるCDを聴きたいと思った時、リッピングに始まりATRAC3へのエンコードから本体の転送まで、1時間近くかかる。同様の時間ならCDが作れるが、CDならPC本体でも、クルマでも、ウォークマンで外でも聴くことができるので、たとえ1時間かかって焼いても十分効果はあるのだ。音楽の著作権保護も大切であるが、音楽愛好家の楽しみまで奪ってしまっては本末転倒という気がしてならない。(音楽ダウンロードも制限付データが300円というのは高い。まだまだインフラが高い日本なんだから、1曲100円くらいでダウンロードできれば利用してもいいと思うが。)


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